屋根修理とアスベストの関係性・注意点について解説
2024/07/03
アスベストと聞くと、健康被害を引き起こす危険な素材として認識されている方が多いのではないでしょうか。現在では出荷が禁止され、市場に出回ることは無くなりましたが、アスベストのもう一つの顔として、様々な製品に広く使用された非常に優れた特性を持つ素材といった一面もありました。
この記事では、屋根修理とアスベストの関係性・注意点について解説します。現在お住まいの住宅屋根がアスベストを含むものか不安な方、屋根修理や屋根のリフォームを検討している方、アスベストについて詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
そもそもアスベスト(石綿)とは何か?
アスベストは、髪の毛の5000分の1程度の極めて細い繊維を持った天然の繊維状鉱物です。耐久性・耐熱性・電気絶縁性などの非常に優れた特性を持ち、安価であることから「奇跡の鉱物」として建築材料や自動車部品、電化製品、家庭用品など3000種ほどの様々な用途に広く使用されてきました。日本では1955年頃からアスベストを使用した建材製品が使われ
はじめ、高層化したビルや鉄骨造り建築物などの軽量耐火被覆材として、高度経済成長期である1960年に多く使用されました。アスベストを使用した製品の約8割は建材製品で、アスベストをセメントと水で混ぜ、吹き付け施工する吹き付け石綿などが有名です。その他にも、屋根材・外装材・内装材などにも広く使用されていました。
しかし、繊維状の極めて細かく丈夫で変化しにくい特徴を持つため、長期間に渡り大量に吸入すると長い潜伏期間を経て、肺がんや中皮腫などを引き起こすことが指摘されるようになりました。日本では、1975年に建造物への吹き付けアスベストの使用が禁止され、2004年には1%以上のアスベストを含む製品の出荷が原則禁止されました。2006年には同基準が1%から0.1%以上に引き上げられています。2005年には、原料にアスベストを使用した製品を製造していたニチアス株式会社、クボタ株式会社で製造に携わっていた従業員とその家族など多くの人間が死亡したことが報道され、世間に広く知れ渡るきっかけとなりその後も、建設や造船、鉄道会社などにおける被害が多く報じられました。
アスベスト不使用の屋根材が抱える注意点
アスベストは健康被害をもたらす素材として知られるようになりましたが、様々な製品に広く使用されていたのは優れた多くの特性を持つためでした。一般住宅の建材として、当時のスレート屋根材や窯業系サイディングなどにも、耐久性・耐火性を向上させる目的で多く使用されていましたが、アスベストによる健康被害が明らかになるに連れ、原料にアスベストを使用しない屋根材などの住宅建材が多く誕生するようになりました。
多くの住宅用建材メーカーが、アスベストを使用しないノンアスベストの屋根材を発売するようになり、新築住宅や屋根のリフォームなどでノンアスベストの屋根材が多く使用されました。ところが、施工から10年ほどで屋根がひび割れや層間剥離などでボロボロになるといった報告が相次ぎました。ニチハ株式会社のスレート屋根である「パミール」が、特に多くの被害報告があったため広く知られるようになりましたが、多くの建材メーカーが製造・販売したノンアスベストの屋根材でも同様の報告が多く寄せられました。
当時のスレート屋根の耐用年数は25年ほどと言われていたため、10年ほどでボロボロになってしまうノンアスベストのスレート屋根は、耐久性に問題があると言わざるを得ませんでした。このように耐久性に問題がある屋根材が多く出回ってしまった背景には、アスベストに代替する耐久性を持つ素材の開発技術と、長期使用における耐久性の検証が不十分だったためと言われています。現在、建材メーカーが販売しているノンアスベストのスレート屋根材は、十分な耐久性を確保していると言われていますが、発売から十分な年月が経過していないため不確実性が残っています。
アスベストを含む屋根材を使用した住宅に住むと危険?
結論から述べると、アスベストを含む屋根材を使用した住宅に住んだとしても健康被害が起こる心配はほぼありません。アスベストは発じん性(粉塵の発生しやすさ=飛散しやすさ)が著しく高いものから作業レベル1・2・3と区分されており、スレートなどの屋根材は発じん性の比較的低いレベル3に区分されています。最も発じん性の高いレベル1に区分されているのが、耐火皮膜や吸音、結露防止剤として吹き付けられたアスベストで、除去作業には作業場所の隔離や高濃度の粉塵量に対応した防塵マスク、保護衣など厳重なばく露防止対策が必要になります。レベル3に区分される屋根材は、極端に損傷や破砕したものでない限り健康被害を及ぼすことはありません。
アスベストを含む屋根材かどうかの見分け方
現在お住いの住宅が、アスベストを含む屋根材を使用しているかどうかの見分け方には次の3つがあります。
✅住宅を新築した年代
✅屋根材の種類
✅屋根材の商品名や製造番号
住宅を新築した年代
2004年にアスベストを1%以上含む製品の出荷が原則禁止されたため、2004年より後に住宅を新築された方(2004年以前に製造された建材を使用していない場合)は基本的にアスベストを含む建材を使用していない可能性が高いです。2004年頃に新築された住宅にお住まいで不安な方は以下の判別方法もあります。
屋根材の種類
屋根材には、粘土瓦・セメント瓦・スレート・金属と様々な種類がありますが、このうち、かつてアスベストが使用されていた屋根材はスレート(カラーベスト・コロニアルなど)とセメント瓦です。セメント瓦は厚型スレートとも呼ばれており、素材はスレートとほとんど変わりません。スレート・セメント瓦以外の屋根材にはアスベストは使われていないため対象外になります。
屋根材の商品名や製造番号
お住まいの住宅の屋根材がスレートやセメント瓦で、屋根材の商品名や屋根材に刻印された製造番号が分かる場合は、国土交通省・経済産業省のホームページである「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で調べることができるほか、石膏ボード工業会、ロックウール工業会のホームページなどでも情報を公開しています。屋根材の商品名や製造番号は、住宅を建築する際の仕様書や設計図に記載されている場合もあります。
アスベスト事前調査結果の報告制度とは?
2022年4月より、建築物の解体や改修工事を行う場合、施行業者には大気汚染防止法に基づき、アスベストを含む建材の有無の事前調査結果を都道府県や労働基準監督署に報告することが義務づけられました。調査・報告は工事を請け負う施工業者が行いますが、依頼主(住宅にお住まいの方)は住宅設計図書など調査に必要な書類を提供してもらう場合があります。
アスベスト事前調査結果の報告が必要になる対象
全ての建築物の解体補修工事で、アスベスト事前調査結果の報告義務が発生するわけではありません。結果報告の義務が発生するのは次の3つです。
①80㎡以上の床面積を持つ建築物の解体工事
②建築物の改修工事において請負代金の合計額が税込み100万以上
③工作物の解体・改修工事において請負代金の合計額が税込み100万以上
①80㎡以上の床面積を持つ建築物の解体工事
解体する建築物の延べ床面積が80㎡以上ある場合は調査・報告が必要です。80㎡は、その建築物が建っている敷地の面積ではなく、解体する建築物自体の延べ床面積であるため注意が必要です。
②建築物の改修工事において請負代金の合計額が税込み100万以上
建築物の改修工事には、屋根の葺き替えや屋根のカバー工法、屋根・外壁の塗装も含まれます。
③工作物の解体・改修工事において請負代金の合計額が税込み100万以上
工作物とは、煙突や焼却設備・ボイラー・タービンなど多岐に渡ります。詳しくは厚生労働省のPDFである「第1講座 工作物石綿事前調査に関する基礎知識」に記載されています。
まとめ
この記事では、屋根修理とアスベストの関係性・注意点について解説しました。アスベストはかつて様々な製品に使用されていましたが、健康被害問題が広く報道され現在では出荷が禁止されています。
アスベストを使用せずに製造された初期のスレート屋根は、極端に耐久性の低い製品があるため注意が必要です。お住まいの住宅屋根にアスベストが含まれているかの見分け方は、新築した年代・屋根材の種類・商品名や製造番号の3つがありますので参考にしてください。
株式会社ハジメは屋根修理の職人直営店です。関東一円に施工実績を持ち、雨樋から雨漏り修理、屋根のリフォームなど幅広く手掛けております。お住まいの住宅屋根などにアスベストが含まれているか心配な方もお気軽にご相談ください。
アスベストを含んだ屋根や劣化が進んでいる屋根など、屋根のリフォームを検討している方には、屋根周りが新品同様になる葺き替え工事がおすすめです。リフォームの費用の相談や、新しい屋根材でお悩みの方もぜひ株式会社ハジメにご連絡ください。お待ちしております。