パミール屋根とは?見分け方とメンテナンス方法について解説
2024/02/29
パミール屋根をご存知でしょうか?スレート屋根材であるニチハのパミール屋根は、劣化しやすいことで有名になってしまった屋根材です。お住まいの屋根がパミール屋根か不安な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パミール屋根の問題点や劣化症状、見分け方やメンテナンス・修理方法を詳しく解説します。
20数年前に新築を建てられた方や、屋根のリフォームをされた方は、是非参考にしてください。
パミール屋根とは?
パミール屋根は、住宅建材メーカーであるニチハ株式会社が、1996〜2008年まで製造・販売していたノンアスベスト(アスベストを使用していない)のスレート素材の屋根材です。
スレート屋根材の耐用年数はおよそ20〜30年と言われていますが、ニチハのスレート屋根材であるパミールは、施工後10年ほどでボロボロに劣化してしまう困った特徴があります。
スレート素材とアスベストの関係性
西洋では、古くから天然のスレート(粘板岩)が屋根などの建築材として使われていました。
天然スレートは薄い板状に割れる性質を持つため加工がしやすく、ほとんど水を吸収しないことから耐久性が極めて高く、防火性にも優れることから、優れた天然素材として多くの建造物で使用され、歴史的建造物のなかには数百年の風雪に耐えているものもあります。
現在一般的に使用される住宅建材用スレートは、「人工スレート」や「化粧スレート」と呼ばれるもので、主材料であるセメントに、耐久性を持たせるための繊維素材を混ぜた薄い板状の素材です。
化粧スレートは価格が安く軽量で施工が簡単といった特徴があり、1996年時点では住宅屋根材のシェアNo1を占めるほどに広く普及していました。
当時の住宅建材用のスレート屋根(化粧スレート)は、セメントに耐久性を持たせる繊維素材として、アスベスト(石綿)が用いられるのが一般的でした。
アスベストは保湿性・耐熱性・絶縁性に優れることから「奇跡の鉱物」として建築材料や電化製品、自動車部品などさまざまな製品に広く使用されていましたが、空気中に飛散したアスベストを長期間吸入すると、肺がんや中皮腫の誘因になることが指摘されるようになりました。
パミール屋根の問題点
アスベスト問題にいち早く対応するため、当時の住宅建材メーカー各社はアスベストを使用しないノンアスベストのスレート材を製造・販売するようになりました。
しかし、十分な実証実験がされていなかったのか、各社の製造・販売したノンアスベストスレート材の多くが耐久性が低く、劣化の早い建材となってしまいました。
そのなかでも、特に多くの劣化被害が報告されたのがニチハのパミール屋根だった、という訳です。
パミール屋根に発生する主な劣化症状
パミール屋根は施工後およそ10年ほどで劣化症状が顕著に現れます。パミール屋根に発生する主な劣化症状は次の4つです。
- ・先端部の変色
- ・層間剥離
- ・釘の腐食
- ・屋根材のずれ・落下
先端部の変色
パミール屋根の劣化の初期段階に現れるのが、先端部の変色です。パミール屋根は耐水性が低く水分を吸収しやすいと言われており、特に雨水がとどまりやすい屋根材一枚一枚の先端部から徐々に白っぽく変色していきます。
層間剥離
変色の次に現れる症状が、層間剥離です。先端部から雨水を吸収・乾燥を繰り返すことで劣化が進み、パイ生地のようにパリパリと層状にめくれ上がる症状が現れます。
変色した先端部から剥離が始まり、さらに劣化が進むと一枚の屋根材全体に剥離が広がります。セメントを主成分としたパミール屋根は最終的にボロボロになり、劣化した屋根材の欠片が軒下に落ちて初めて劣化に気が付くケースもあります。
釘の腐食
釘の腐食もパミール屋根に現れるよくある症状です。厳密に言えば屋根材の症状ではないのですが、屋根を構成する大切な部材の一つとして解説します。
パミール屋根を含むスレート屋根材は、釘を打つことで下地材である野地板に固定されています。パミール屋根の固定には、販売時に無償で配布された「パミール用釘」が使われたのですが、耐食性表面処理(ラスパート)として施されるメッキの厚みが薄いものがあり、腐食しやすい特徴がありました。
ニチハ株式会社は、平成22年11月5日にラスパート釘の腐食についての声明を出しています。
※参考 ニチハ [ラスパート釘(屋根材「パミール」付属品)に関するお詫びとお知らせ]
屋根材のずれ・落下
釘の固定箇所は、屋根材が重なった部分にあるためすぐに確認できません。ラスパート釘の中でも劣化の激しいものは、腐食により釘の頭(叩く部分)がなくなってしまうものも。
そのため野地板への固定が弱まり屋根材がずれたり、最悪の場合は屋根材が落下してしまう危険もあります。台風などの強風で、固定の甘くなったパミール屋根材が飛ばされてしまうケースもあるようです。
パミール屋根の見分け方
パミール屋根の見分け方は次の通りです。
- ・屋根を施工した年による判断
- ・凹凸が均等に並んだデザイン
- ・表面の木目調のデザイン
- ・施工した住宅会社や屋根施工店に確認する
屋根を施工した年による判断
パミール屋根材が販売されていたのは、1996〜2008年なのでこの間に施工していなければパミール屋根の可能性は低くなります。
凹凸が均等に並んだデザイン
パミール屋根の一番わかりやすい見分け方は、先端の凹凸の間隔です。劣化が始まっている場合はわかりにくいかもしれませんが、パミール屋根材の先端は真っ直ぐではなく等間隔の凹凸が並んだデザインになっています。
他のスレート屋根材は凹凸の間隔が等間隔ではないため、見分けることができます。
表面の木目調のデザイン
パミール屋根材は表面が縦の木目のようなデザインになっています。全体がボロボロになっていなければ、見分ける材料になるので確認してみましょう。
施工した住宅会社や屋根施工店に確認する
屋根を確認する方法がなく見分けが付かない場合は、施工した住宅会社や屋根施工店に確認する方法もあります。
また、施工を行った当時の書類が残っていれば書類を確認するのも良いでしょう。仕様書や見積書に使用した建材が記載されているはずです。
パミール屋根のメンテナンス・修理方法
パミール屋根のメンテナンス・修理方法は次の通りです。
葺き替え工事
パミール屋根のメンテナンス・修理には、既存の屋根材をすべて撤去し、新たな屋根材を設置する「葺き替え工事」が確実でおすすめです。葺き替え工事は古い屋根材を撤去するため、防水シートや下地材である野地板の状態もチェックできます。
特に既存のパミール屋根がボロボロになっていた場合は、下地材に影響が出ている可能性が高いため、チェックし、必要があれば補修や交換ができるメリットがあります。
次に解説する「カバー工法」よりもコストがかかりますが、葺き替え工事は、屋根を新品同様にできて長持ちする安全で確実な方法です。
カバー工法
カバー工法は、既存の古い屋根材の上に新しい屋根材を被せるようにして張る方法です。葺き替え工事よりもコストがかからず、工事期間も短く済むため、工事費用を抑えたい方におすすめです。
パミール屋根は吸水性が高いと言われているため、カバー工法を行うと屋根の内側で結露し、下地にダメージを与えてしまうのではないかとの懸念もあります。
既存のパミール屋根がボロボロで下地まで傷んでいる場合は、カバー工法はできないため注意が必要です。
パミール屋根への塗装がおすすめできない理由
パミール屋根のメンテナンスとして、屋根材への塗装はおすすめできません。塗装は表面に塗膜を造り、雨や紫外線から屋根材を保護する目的がありますが、パミール屋根の場合は先端部からの層状剥離劣化であるため、表面への塗装は意味をなしません。
さらに、屋根塗装の最初の工程には、屋根の汚れを落とすための高圧洗浄があるため、パミール屋根にさらにダメージを与える危険性があります。
まとめ
この記事では、パミール屋根の問題点や劣化症状、見分け方やメンテナンス・修理方法を詳しく解説しました。
パミール屋根はノンアスベストで製造された新世代の屋根材でしたが、結果として悪い形で名前を残すことになってしまいました。
もしお住いの屋根にパミール屋根が使われていた場合は、劣化具合を確認しましょう。ご自身で出来ない場合は、屋根専門業者などに点検してもらう方法が安全です。
葺き替え工事から屋根の修理や雨漏り、雨樋修理なら屋根修理専門店の株式会社ハジメにお任せください。千葉県千葉市を中心に関東一円で数多くの施工に携わらせていただいております。
もちろんパミール屋根についての質問や工事についても大歓迎です。経験豊富な職人が誠実に対応いたします。ささいな事でも構いません。お気軽に株式会社ハジメまでご用命ください。