屋根の換気棟(かんきむね)とは?役割やメリット・デメリットについて
2024/03/27
近年は、夏は涼しく冬は暖かい住宅が増えています。これは「高気密・高断熱」によるもので、外気温の影響を受けづらくしています。ひと昔前の住宅は気密性が高くない反面、住宅全体の換気性は優れていました。
現在でも換気棟によって屋根裏の換気をすることで、住宅全体を健康に保つ働きがあります。この記事では、換気棟の概要や役割、メリット・デメリットなどを解説します。
新築を予定している方や屋根修理を検討中の方、換気棟に興味のある方はぜひ参考にしてください。
換気棟とは
換気棟とは、屋根の頂上部に設置される屋根裏を換気するための特殊な構造の棟のことです。「棟」とは屋根の頂上部のことで、棟板金は屋根の頂上部を覆う金属の建築部材です。換気棟は通常の金属棟と交換する形で設置されますが、その形状は通常の棟板金とほとんど変わりません。そのため、屋根の形を大幅に変更することなく屋根裏の換気を行うことができます。
換気棟の役割
換気棟の役割は、屋根裏を屋外と通気させることによって温度や湿度の調節を行うことです。
例えば夏の場合、強い日差しを受けた屋根は加熱され、屋根の下地材である野地板裏の温度は50℃ほどまで上昇します。そのため密閉された屋根裏空間も高温になり、その温度は60℃以上になると言われています。屋根裏下には居住空間がありますが、その部屋の温度を下げようとしても天井から熱せられている事になるため、なかなか室温を下げることができません。
しかし、換気棟を設置することで空気の通り道ができ、屋根裏の熱を帯びた空気を外に逃がすことができます。暖かい空気は上にたまり冷たい空気は下にたまるため、屋根の頂上部に設置された換気棟によって最も効率的な排熱が可能になります。
反対に冬の場合は、冷たい外気が屋根に触れることで屋根は冷やされ、野地板裏の温度も低下します。室内の暖められた空気は上へと上昇し、屋根裏まで到達します。屋根裏に到達した暖かい空気は野地板に触れることで冷やされ結露が発生します。結露などの湿気は、密閉された屋根裏では逃げ場所がないため溜まっていく一方になってしまいます。
換気棟を設置することで屋外と屋根裏を通気させることができるため、結露などの屋根裏にこもった湿気を外に逃がすことができます。
換気棟を設置するメリット
換気棟を設置するメリットは次の通りです。
・結露やカビを抑えられる
・電気を使わずに屋根裏の換気ができる
・野地板の劣化を抑えることができる
・光熱費の削減に繋がる
結露やカビを抑えられる
前述した通り、換気棟の設置は屋根裏の結露を抑え湿気を外に逃がす働きがあります。カビは結露が起こるような湿度の高い場所に発生しやすく、一度発生すると場所によっては除去が難しいものでもあります。屋根裏は湿度が高くなりやすく空気が滞留するため、カビにとっては理想的な空間と言えます。
カビは黒ずみを発生させ美観を損ねるだけでなく、アレルギーの原因物質としても厄介な存在です。カビによるアレルギーはくしゃみや鼻水、咳などの症状があり、ハウスダストやダニと同様に屋外よりも室内で症状が悪化します。
屋根裏は普段人が入らないためカビの発生に気が付きませんが、屋根裏にカビが発生してしまうと根絶はほぼ不可能になってしまいます。換気棟の設置は屋根裏の湿度を下げ、カビの発生を抑制することにも繋がります。
電気を使わずに屋根裏の換気ができる
換気扇など、電力が掛かる設備を24時間回しっぱなしにすることに抵抗がある人もいるのではないでしょうか。換気棟は、電気などの動力がなくても換気ができるメリットがあります。屋根の頂上部に設置されるため効率的ですが、雨が降るたびに開け閉めする必要もありません。電力や手間をかけることなく換気ができるのも換気棟の魅力です。
野地板の劣化を抑えることができる
換気棟は湿気を外に逃がす働きがありますが、屋根の下地材である野地板の劣化を抑える事にも繋がります。屋根は、屋根材・防水シート・野地板によって構成されており、どれをとっても欠かすことのできない重要な部材です。特に野地板などの木材は、水分によって傷みが進行するため、屋外に近い場所ほど劣化や腐食のリスクが高いと言えます。
湿度が高い屋根裏は、野地板や骨格となる木材にとって厳しい環境です。換気棟を設置することで屋外と通気させ、効率的に結露や湿気を排出できれば、野地板や屋根裏の骨格となる木材が湿気などの水分にさらされる時間が減ります。これにより劣化や腐食を抑える又は、遅らせることができます。屋根の健康状態は住宅全体の健康状態に直結するため、屋根裏や野地板を良い状態に保つことは、住宅の寿命を担保することでもあります。
光熱費の削減に繋がる
先にも解説しましたが、換気棟は屋根裏の暖かい空気を外に解放する働きがあります。夏季の屋根裏の熱せられた空気を排出し温度を下げることで、下階にある室内空間の天井の温度が下がります。そのため室内の冷房効率が高まり、短い時間で室内を冷やすことができます。結果として、冷房の運転時間や使用頻度を減らすことができるため、光熱費の削減に繋がります。
換気棟を設置するデメリット
換気棟を設置するデメリットは次の通りです。
・設置には高い技術力と専門知識が必要
・換気棟を設置できないケースもある
設置には高い技術力と専門知識が必要
換気棟の設置には、高い技術力と専門知識が必要です。換気棟の設置は屋根の頂上部に穴を空けて設置されるため、施工不良で雨漏りが発生する可能性があります。もちろん正しい施工がされれば雨漏りが起こることはありません。しかし、経年劣化やメンテナンス不足により雨漏りの可能性があるのも事実です。
また、換気棟は法律による義務ではありませんが、住宅金融支援機構におけるフラット35の融資条件になっており、換気方法別に天井面積に対する有効換気面積など一定の基準があります。
換気棟はただ取り付ければいいという訳ではなく、空気の流れをつくることが大切です。それには、適切な場所に適切なサイズの換気棟を設置する必要があるため、専門知識なしでは十分な通気効果は得られません。これらのことから換気棟の設置は、経験のない建築業者では難しいと言えます。高い技術力と専門知識を持った専門業者を探して、設置を依頼するようにしましょう。
換気棟を設置できないケースもある
換気棟は、住宅の形状や条件によっては設置ができないケースもあります。たとえば、住宅屋根が特殊な形状をしている場合は、換気棟を設置する位置やスペースが限られる可能性があります。
また、換気棟は設置できる傾斜がそれぞれのタイプにより決まっています。急な傾斜の屋根の場合や、対応していない傾斜角の屋根には設置することができません。
加えて、太陽光パネルやテレビアンテナ、衛星アンテナが屋根に設置されていて、動かすことができない場合にも換気棟の設置が制限されてしまいます。換気棟の設置が制限される場合は、換気棟以外の換気設備の導入を検討して、住宅の通気経路を確保する必要があります。どのような換気棟や換気設備があるのか良く調べ、住宅の環境に合った換気システムを構築しましょう。
換気棟の取り付け手順
換気棟の取り付け手順は次の通りです。
1.既存の棟板金を撤去する
屋根の頂上部にある既存の屋根板金を撤去し、屋根板金を固定していた貫板を取り外します。
2.屋根に換気のための穴を空ける
防水シートや野地板に、換気棟の設置に必要なサイズの換気穴を空けます。
3.開口部に雨仕舞い(雨漏りや防水対策)をする
換気棟の設置においてもっとも重要な工程で、開口部を防水テープやシーリングなどで雨仕舞い(雨漏りや防水対策)をします。この処理が不十分だと雨漏りが発生し、野地板や天井の損傷、カビの発生など大きな被害をもたらす危険性があります。慎重に確実な作業を心がけます。
4.換気棟を設置する
換気棟を設置し、確実に固定したら作業完了です。
まとめ
この記事では、換気棟の概要や役割、メリット・デメリットなどを解説しました。換気棟は、屋根裏の熱気を逃がすことで冷房の効率を上げたり、湿気を逃がすことで屋根裏木材の劣化を防ぐメリットがあります。
ですが、雨漏りの危険性や最適な空気の流れを作る必要があるため、設置には技術力・専門知識が必要です。また、屋根の形や傾斜によっては設置できないため、代替案を考えておくことも大切です。
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