各屋根材の耐用年数と劣化症状について解説
2024/05/24
戸建て住宅の屋根材には様々な種類があり、その屋根材によって耐用年数や劣化症状が異なります。屋根材の耐用年数を知ることは屋根材選びの基準の一つになり得るため、非常に重要です。
この記事では、各屋根材の耐用年数と劣化症状を詳しく解説します。新築を検討し屋根材選びに迷っている方や、屋根修理やリフォームの参考にしたい方はぜひ参考にしてください。
屋根材の耐用年数とは
屋根材の耐用年数とは、その屋根材が住宅の屋根を守る屋根材としての機能を果たせなくなるまでの経過時間や経過年数の事です。その屋根材が持つ「寿命」と言っても良いでしょう。もともと耐用年数は、固定資産税の減価償却を行うための、原価償却費を計算する基礎となる年数として認知されていましたが、機械や設備などが使用されてからその機能を失うまでの年数として知られるようになりました。
注意すべき点として、どの屋根材も屋根材メーカーとしての公式な耐用年数を明確に発表していない点があります。そのため、これから解説する各屋根材の耐用年数は、一般的に言われているおおよその耐用年数だと言うことに注意が必要です。
各屋根材の耐用年数
日本で広く普及している主な各屋根材の耐用年数は次の表の通りです。
屋根材の種類 | 耐用年数 |
粘土瓦 | 50~100年 |
トタン | 10~20年 |
セメント瓦 | 30~40年 |
スレート | 20~30年 |
ガルバリウム鋼板 | 30~50年 |
粘土瓦の特徴
粘土瓦はいわゆる昔ながらの瓦屋根に主に使用されている瓦です。非常に長い耐用年数があり、丈夫で塗装によるメンテナンスが不要ですが、重量が重いのが難点です。
粘土瓦の劣化症状
粘土瓦は非常に高い耐久性を持っているため、屋根材そのものが劣化することはほとんどありません。瓦屋根全体に起こる劣化症状とトラブルは次の通りです。
✅漆喰の劣化
✅瓦のずれ
✅瓦の割れ
漆喰の劣化
粘度瓦そのものはほぼ劣化しませんが、屋根の頂点である棟に使用されている漆喰は雨水や紫外線によって劣化します。漆喰は棟瓦と屋根瓦の間にある三日月状の隙間を埋めるために用いられていますが、劣化するとひび割れてボロボロと崩れてしまいます。漆喰が崩れると瓦を固定する力が弱まるため、棟瓦が蛇行したり屋根瓦がずれる可能性が高まります。漆喰が劣化した場合は詰め直し工事を行います。
瓦のずれ
漆喰の劣化以外にも、地震や台風などの影響で屋根瓦がずれる事があります。瓦をずれたままにしておくと落下や飛散の可能性が高まるため危険です。地震や台風でずれただけであれば瓦を元の位置に戻して修理完了です。
瓦の割れ
耐久性の高い粘度瓦ですが、台風など飛来物が当たると割れてしまう事があります。 割れた瓦は一枚単位で交換できるため、気づいた際は早急に手配しましょう。また、修理の際には下地の防水シートなどが傷んでいないか確認してから新しい瓦を設置します。
トタンの特徴
トタンはガルバリウム鋼板が登場する以前に、金属屋根として用いられていた屋根材です。価格が安く軽量ですが、錆びやすい特徴があります。
トタンの劣化症状
トタンの劣化症状は次の通りです。
✅色褪せ・塗装の剥がれ
✅錆びの発生
✅腐食による穴あき
色褪せ・塗装の剥がれ
トタンは施工から5年ほど経過すると、劣化の初期症状として色褪せや塗装の剥がれが起こります。5年~10年おきに塗装によるメンテナンスを行い錆びを発生させないよう気を付けましょう。
錆びの発生
色褪せや塗装の剥がれを放置すると、錆が発生します。軽い錆びであれば綺麗に落として塗装をすることで問題なく使用できますが、屋根全体に錆が広がってしまうと落とすことは困難になってしまいます。錆びの上から塗装をしてもすぐに錆びてしまうため効果がなく、屋根材自体を交換する葺き替えなどが必要になってしまいます。錆びの初期段階で対処することが重要です。
腐食による穴あき
屋根の錆が進行すると最終的には腐食し、穴が空いてしまいます。トタンの穴を部分的に塞ぐことは不可能なため、屋根の葺き替えが必要になります。トタン屋根に穴が空いた場合、下地である防水シートなども劣化が進んでいる可能性が高いため、念入りにチェックし必要に応じて下地の補修や交換を行います。
セメント瓦の特徴
セメント瓦は、その名の通りセメントを主原料に砂利を混ぜ合わせて造られた屋根材です。粘土瓦よりも安く製造しやすいため高度経済成長期に普及を広めました。現在では樹脂繊維を混ぜた次世代軽量セメント瓦が販売されています。
セメント瓦の劣化症状
セメント瓦の劣化症状は次の通りです。
✅漆喰の劣化
✅塗膜の剥離
✅表面のざらつき・苔や藻の発生
✅瓦の割れ
漆喰の劣化
粘土瓦と同じくセメント瓦屋根の棟にも漆喰が使用されています。劣化すると瓦の固定が弱まるため漆喰の塗り直しが必要になります。
塗膜の剥離
セメント瓦は粘土瓦と違い、表面に防水の為の塗装が施されています。施工から10年ほど経過すると表面の塗膜が剥がれてしまうため、雨水により劣化が早まってしまいます。そのため、施工後10年を目安に塗装によるメンテナンスを行うようにしましょう。
表面のざらつき・苔や藻の発生
表面の塗膜が剥がれるとセメント瓦は劣化し、表面がざらついて水分を吸収しやすくなってしまいます。これを放置すると苔や藻が発生してさらに劣化を促進させてしまうため、早急に対応が必要です。もし苔や藻が発生した場合は、高圧洗浄で苔や藻を除去してから塗装をする必要があります。
瓦の割れ
セメント瓦は飛来物によって瓦が割れることがあります。粘土瓦よりも厚みがない分、強度が低いため注意が必要です。割れた瓦は飛散して周辺に落下する可能性が高いため、台風の後などは屋根をチェックすると良いでしょう。
スレートの特徴
スレートはセメントを薄くプレート状にした屋根材で、デザイン性が高い特徴があります。耐久性に問題があるイメージがありますが、現行モデルでは改良されているようです。塗装により表面が保護されています。
スレートの劣化症状
スレートの劣化症状は次の通りです。
✅色褪せ・塗膜の剥離
✅藻や苔の繁殖
✅ひび・欠け・反り
色褪せ・塗膜の剥離
スレートもセメント瓦と同じく、表面には防水のための塗装による塗膜があります。環境にもよりますが、早いと5年ほどで塗膜が剥がれ色褪せが起こります。スレートは塗膜が剥がれると水分によりダメージを受けやすくなってしまうため、色褪せが起こってしまった場合は塗膜によるメンテナンスが必要です。
藻や苔の繁殖
塗膜が剥離するとスレート表面はざらつき凸凹するようになります。そのため、苔や藻の胞子が屋根に付着して根を張る事があります。特に日光が当たりにくい屋根の北面で起こることが多く、苔や藻が繁殖すると水分がさらに溜まりやすくなるため、劣化が早まります。藻や苔が屋根全体に広がらないうちに、早めに対処しましょう。
ひび・欠け・反り
ひびや欠け、反りはスレートの劣化が進むと起こりやすい症状です。ひびや欠けは飛来物が当たっても起こりますが、反りはスレートの劣化が進んで水分が内部に浸透し、乾燥を繰り返すことでセメント組織がぼろぼろになり発生します。屋根全体のスレートに反りが発生しているようであれば、葺き替えやカバー工法による屋根の修理・リフォームをおすすめします。
ガルバリウム鋼板の特徴
金属屋根材であるガルバリウム鋼板は、軽量で長い耐用年数、高い腐食性を持った屋根材です。トタン屋根に変わる金属屋根として近年広く普及している屋根材でもあります。
ガルバリウム鋼板の劣化症状
ガルバリウム鋼板の劣化症状は次の通りです。
✅チョーキング・塗膜のふくれ
✅白錆びの発生
✅赤錆びの発生
チョーキング・塗膜のふくれ
施工から年月が経過したガルバリウム鋼板表面を手で触れると、白い粉のようなものが付く場合があります。これはチョーキングと呼ばれるもので、ガルバリウム鋼板の塗膜が劣化し始めたサインでもあります。チョーキングがさらに進行すると塗膜表面にぽつぽつとふくれが発生します。ふくれが散見されるようであれば塗装メンテナンスのタイミングです。環境にもよりますが目安はおよそ15年程度です。
白錆びの発生
白錆びは塗膜のふくれが進行すると発生するもので、表面に斑点のようにぽつぽつと白く現れます。白錆びが現れるようであれば、塗装メンテナンス時期を過ぎている可能性が高いため、専門業者の依頼するようにしましょう。
赤錆びの発生
赤錆びは白錆びを放置する又は、鋼板表面が深くキズ付いた際に発生する劣化症状です。赤錆びを放置すると周りにどんどん広がっていき、最終的には腐食による穴が空きます。ガルバリウム鋼板は腐食耐性が高いため、ここまで劣化が進行することはあまりないですが、可能性としてゼロではありません。
腐食したガルバリウム鋼板は交換するしかないため、屋根の大規模な修理やリフォームが必要になります。腐食が進まないように劣化の初期段階で塗装によるメンテナンスを行うようにしましょう。
まとめ
この記事では、各屋根材の耐用年数と劣化症状を詳しく解説しました。各屋根材の耐用年数や劣化症状を知れば屋根材を選ぶ基準にも、適切なメンテナンス時期の判断基準にもなります。
耐用年数が最も長い屋根材は粘土瓦で、50年〜100年ほどの非常に長い耐用年数があります。ただし、粘土瓦自体の重量が重いため住宅の耐震性が低くなるデメリットがあります。
現在多くの住宅で施工されているのがガルバリウム鋼板製の金属屋根です。ガルバリウム鋼板は、軽く錆びにくく耐久性が高い特徴があり、30年~50年の耐用年数があります。予算や住宅環境、屋根材の性能などを考慮して、ご自身にとって最も相性の良い屋根材を選ぶようにしましょう。
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