塗装ができない屋根材「セキスイかわらU」とは?屋根修理方法もご紹介
2024/08/22
屋根材には瓦やスレート、金属屋根など様々な種類があります。セキスイかわらUはスレート素材に分類される屋根材で、住宅に多く施工された実績のある屋根材です。実はセキスイかわらUには、耐久性の高いものとそうでないものがあることをご存知でしょうか。
この記事では、セキスイかわらUの耐久性の問題点や塗装ができない理由、修理方法などを詳しく解説します。屋根修理でお悩みの方や、セキスイかわらUについて詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
セキスイかわらUとは?
セキスイかわらUは、セキスイルーフテック株式会社(旧積水屋根システム株式会社)により1970年から2007年まで販売されていた住宅用屋根材です。「かわら」といった名前がついていますが、いわゆる厚型スレートと呼ばれるセメント瓦の一種で、粘土瓦よりも軽量かつ瓦を模した高いデザイン性を持ち、住宅の屋根材として多く採用されました。
セキスイかわらUが抱える耐久性の問題
1970年頃に販売されていた屋根材のうち、スレートや一部のセメント瓦には耐久性を高めるために原材料としてアスベストが含まれていました。現在では、健康被害を起こすことが広く知れ渡っているため、あまり良い印象を持たれなくなったアスベストですが、耐久性や耐熱性など優れた特徴を多く持ち安価であったことから、建材や自動車部品、電化製品など多くの製品に使用されていました。
セメント瓦の一種であるセキスイかわらUにも1970年の発売からアスベストが使用されており、高い耐久性を実現していましたが、アスベストの健康被害が多く報道されるようになり、1990年8月にはアスベストを使用しないノンアスベストタイプのセキスイかわらUの販売が始まりました。
ところが、ノンアスベストタイプのセキスイかわらUを用いた住宅からは、施工から数年しか経過していないにもかかわらず、塗装の剥がれや基材の割れなどの劣化が著しいといった報告が相次ぎました。これはメーカーを問わず、同じ時期に発売が始まったされたノンアスベストタイプの多くのセメント系屋根材に多く見られた症状で、どのメーカーも開発を急いだのか耐久性が不十分な屋根材製品が多く出回ってしまいました。
これは、アスベストと同等の耐久性を持つ素材を用意できなかったことが大きな要因になったのではないかと言われており、なかでも特に多くの不具合報告が寄せられたニチハ株式会社のスレート屋根製品である「パミール」などが有名です。そのため、セキスイかわらUは1990年8月より前に販売していたアスベストを含むものと、それ以降に販売したノンアスベストのもので耐久性が大きく異なります。
セキスイかわらUはなぜ塗装ができないとされているのか?
セキスイかわらUが塗装できないとされている理由は、屋根材の劣化が進みすぎていて塗装が意味をなさないからです。塗装によるメンテナンスは通常、表面を守る塗膜が落ち始めて薄くなってきた時期に行うことで、撥水能力を回復させ屋根材を水分などから守る狙いがありますが、セキスイかわらUの場合は表面がガサガサになってしまい、ヒビや割れなどが起きているものがほとんどです。そのような状態で上から塗装を施してもうまく塗膜を形成することができないため、本来の狙いである撥水性能を取り戻すことはできません。
さらに、塗装メンテナンスでは最初に、屋根の汚れを高圧洗浄機によって洗い流す工程がありますが、劣化が進んでいるため屋根材が高圧洗浄の圧力に耐えられず、バラバラとめくれて飛散してしまう恐れがあります。
これらのようなことから、セキスイかわらUには塗装ができないとされています。また、1990年より前に製造された耐久性の高いものでも、製造から30年以上経過しているため、塗装によるメンテナンスよりも屋根の葺き替えやカバー工法による屋根のリフォームをおすすめされるケースがほとんどです。
ノンアスベストタイプに現れる劣化症状
ノンアスベストタイプのセキスイかわらUに現れる劣化症状は次の通りです。
✅屋根材表面の塗膜の剥がれ
✅屋根材にひびが入る・割れる
✅屋根材の剥離・崩れ
屋根材表面の塗膜の剥がれ
劣化の初期症状として屋根材の表面を守る塗装が剥がれます。本来であれば最初に色褪せが起こり、徐々に塗膜が落ちていきますが、ノンアスベストタイプのセキスイかわらUは色褪せから完全に塗膜が落ちてしまうスピードが早いため、短い期間で白いセメント質である屋根材の基材が露出してしまいます。塗膜による保護層が無くなると、基材が雨水などの水分を吸収しやすくなってしまうため、苔や藻・カビが生えやすくなり、さらに劣化が早まるといった悪循環に陥ってしまいます。
屋根材にひびが入る・割れる
瓦やスレート素材の屋根材は、台風や強風で飛ばされた飛来物が当たると衝撃で割れることがありますが、セキスイかわらUの場合は衝撃がないにもかかわらずひびや割れが起こります。これは、屋根材の強度が不十分なためと言われており、細かいひびや割れを個別に補修しても次々と割れてしまうため、補修が追いつかないといった事態になります。また、表面の塗膜が残っていてもひびや割れが起こるケースもあるため注意が必要です。屋根材のひびや割れを放置すれば、いずれは雨漏りを引き起こす原因になってしまいます。
屋根材の剥離・崩れ
セキスイかわらUの劣化が最後まで進行すると、屋根材が剥離しボロボロになって崩れます。これは、防水性能を失った基材のセメント質が雨水によって流れ出ることで密度が低下し、強度がさらに低下するためです。屋根全体が白くなっている場合は、この段階まで劣化が進んでいるケースが多く、雨樋や軒下に崩れた屋根材が落ちていることもあります。点検するために屋根に上り、ボロボロの屋根材を踏んでさらに破損させてしまうこともあるため注意が必要です。雨漏りを引き起こす可能性が高いため、早急に屋根の葺き替えやカバー工法などのリフォームを検討しましょう。
セキスイかわらUの見分け方
セキスイかわらUには、1970年〜1990年8月より前に製造された耐久性の高いものと、それ以降に製造された耐久性の低いものがあります。この二種類の見分け方は次の二つがあります。
建物の築年数から見分ける
見分ける方法として最も簡単なものが築年数からの判断です。1990年8月より前に建てられた住宅であれば耐久性の高いものですし、それ以降に建てられた住宅では耐久性の低いタイプが使用されている可能性が高いです。ただし、1990年8月以降に建てられた住宅でも、施工業者に残っていた在庫分の屋根材が使用されているケースもあるため、大まかな目安としての判断方法であることに注意しましょう。
屋根材の刻印から見分ける
中古住宅を購入し、築年数が不明なケースもあるでしょう。そのような場合にもっとも確実な判断方法は、屋根材のロット番号を確認する方法です。セキスイかわらUには棟瓦に英数字でロット番号が刻印されているため、この番号をセキスイルーフテック株式会社に問い合わせると、アスベストを使用したものかどうかの回答を得られます。
セキスイかわらUの屋根修理方法
セキスイかわらUの屋根修理方法は葺き替えとカバー工法の二つです。
葺き替え
葺き替えは既存の屋根材を全て撤去し、新しい屋根材に交換する方法です。既存の屋根材を全て剥がして撤去するため大掛かりな工事になりますが、屋根の下地である防水シートや野地板の状態を実際に目視で確認できるため、状態によっては下地の補修や交換も行えるといったメリットがあります。屋根周りを新築と変わらない状態にできるため、後に解説するカバー工法よりもおすすめですが、古い屋根材の撤去費や処分費がかかり、工期は長くなります。
▷屋根葺き替え工事とは?工程やメリット・デメリットについて解説
カバー工法
カバー工法は、既存の屋根の上から新しい屋根材を被せるようにして施工する工法です。施工費や工期は葺き替えと比べて短くなりますが、基本的には屋根下地の状態を点検確認できないため、雨漏りが進行していたり既存の屋根の状態によってはカバー工法を選択できないこともあります。
▷屋根カバー工法とは?工程やメリット・デメリットについて解説
まとめ
この記事では、セキスイかわらUについて詳しく解説しました。販売初期のものは耐久性の高い優秀な屋根材でしたが、ノンアスベストのタイプは耐久性に問題を抱えた製品になってしまいました。劣化が早く塗装によるメンテナンスはできないため、屋根のリフォームをおすすめです。
株式会社ハジメでは屋根のリフォームはもちろん、屋根修理や雨漏り対策も行っております。現在お住いの住宅屋根にセキスイかわらUをお使いの方は、屋根の点検をおすすめします。
屋根材は雨水の浸入を防ぎ、住宅の寿命を左右する大切なものです。長い間屋根の状態を確認していない住宅にお住いの方は、株式会社ハジメにお気軽にご連絡ください。お待ちしております。