屋根の軽量化をおこなうメリットと方法について
2024/04/30
住宅の屋根材にはさまざまな種類がありますが、屋根材によって重さが異なることをご存知でしょうか。屋根全体にかかる重量を考えた場合、採用する屋根材によっては軽自動車数台分の違いが出るケースもあります。
この記事では、屋根の軽量化をおこなうメリットや耐震基準の違い、屋根の軽量化の方法やタイミングについて解説します。
新築を検討中の方や、屋根の修理・リフォームを検討中の方、屋根の軽量化について知りたい方はぜひ参考にしてください。
屋根の軽量化をおこなうメリット
屋根の軽量化をおこなうメリットは次の通りです。
✅耐震性が向上する
✅屋根材の落下による被害を抑えられる
✅柱や壁など躯体にかかる負担を軽減できる
✅屋根にかかる耐荷重を増やすことができる
耐震性が向上する
屋根を軽量化することで地震が起きた際、住宅の揺れを抑えることができるため耐震性が向上します。住宅の最も高い場所にあるのが屋根材ですが、この屋根材が重ければ重いほど住宅全体の重心が高くなるため、揺れは大きく収まりにくくなります。反対に屋根材が軽ければ、住宅全体の重心が下がるため、揺れは小さく収まりやすくなります。
屋根材の落下による被害を抑えられる
重量のある屋根材と聞いてまず思い浮かべるのが粘土瓦です。防災瓦を除く粘土瓦は、野地板にある瓦桟と呼ばれる引っ掛け板に引っかかって屋根に留まっているため、地震により住宅が激しく揺れると、屋根瓦がずれ落下するケースがあります(2022年より新築において全ての瓦の固定が義務化されている)。
瓦一枚の重量は約3〜4kgあるため、落下した瓦が人に当たれば大怪我を負う可能性があります。また、地面に落下した瓦が割れて飛散すれば外へ逃げる際の障害になるケースもあります。
軽量な屋根材は屋根に固定されて設置しているものがほとんどなため、落下の可能性が低く、落下したとしても被害を最小限に抑えることができます。
柱や壁など躯体にかかる負担を軽減できる
重い屋根材を採用する前提の住宅では、躯体にかかる負担が大きいため強度のある梁や柱を使用する必要があります。反対に軽量な屋根材を採用した場合には、躯体にかかる負担は重い屋根材の場合ほど大きくなく、強固な梁や柱を使用せずに済むため、建築費を抑えることにも繋がります。
重い屋根材から軽い屋根材へ屋根のリフォームをした場合は、躯体への負担が軽減されるため住宅が長持ちしやすいと言われています。
屋根にかかる耐荷重を増やすことができる
重い屋根材から軽量な屋根材へ交換をした場合、屋根に掛かる重量が軽くなるため耐荷重が増します。耐荷重が増すメリットは、太陽光パネルを設置できるようになったり、屋根の積雪荷重が増加するなどがあります。
代表的な屋根材の種類と重さ
新築や屋根のリフォームに使用されることの多い代表的な屋根材の種類と重さは次の通りです。
屋根材の種類 | 重量/㎡ |
粘土瓦 | 約50kg |
スレート(カラーベストなど) | 約22kg |
金属屋根(スーパーガルテクトなど) | 約5kg |
上記の表の通り、最も軽量である金属屋根との比較では、1㎡当たり粘土瓦は10倍、スレートはおよそ4倍の重量差があることがわかります。
粘土瓦の重量は瓦桟による引っ掛け工法の重量で、明治から昭和のはじめ頃までは「土葺き」と呼ばれる工法によって屋根瓦が設置されていました。土葺きは粘土質の土によって屋根瓦を固定する工法で、屋根に大量の土を敷くため1㎡あたりの重量はさらに10〜25kgほど重くなります。
1923年に発生した関東大震災や1995年の阪神・淡路大震災によって土葺き瓦屋根の住宅の倒壊が相次ぎ、現在では「耐震面で不利である」といった理由から採用されることはなくなりました。
現在は、軽量で耐久性が高く比較的安価である金属屋根が主流となっており、ひと昔前の住宅環境に比べ、耐震性が大幅に向上しています。
耐震性が向上したのは屋根材の軽量化以外にも理由がある
住宅の耐震性が向上しているのは、屋根材が軽量になった以外にも理由があります。それは耐震基準の見直しです。耐震基準は、建物を建てるうえで定められた地震に対する安全基準で、1981年5月31日以前の旧耐震基準では、「震度5程度の中地震で倒壊・崩壊しないこと」のみが条件でした。
この耐震基準は1981年6月1日に更新され、新耐震基準では「震度5程度の地震で軽微なひび割れ程度にとどまること」「震度6程度の大地震で倒壊・崩壊しないこと」と定められました。新耐震基準では中地震のみならず、大地震にも耐えられる設計を一次設計(許容応力度計算)・二次設計(保有水平耐力計算)の二段階でチェックすることを求めています。
ですが、この新耐震基準には法的拘束力が無い部分も多かったため、2000年に建築基準法を大きく改正し、法的拘束力を持たせました。それが現行の耐震基準である2000年基準です。2000年基準では以下のような項目が追加されました。
・建設する地盤に合った基礎構造の設計
・耐力壁の配置バランスの規定
・接合金物の規定
建設する地盤に合った基礎構造の設計
建設する地盤を調査し、地盤の地耐力(住宅の重さに耐えうる地盤の力)に適した基礎構造にすることが求められるようになりました。地盤が弱いと建設した住宅が沈んで傾いてしまう「不同沈下」が起こり、基礎や梁、柱などにダメージを与え、住宅に大きな被害を与える可能性があります。不同沈下を起こさないよう、事前に地盤調査を行い必要に応じて地盤改良を行う必要があります。
耐力壁の配置バランスの規定
新耐震基準では、床面積当たりに必要な耐力壁(水平方向に加わる力から耐えられるよう、柱と梁、土台で組んだ四角形に筋交いなどを入れ変形を防いだもの)の量や長さが規定されていましたが、配置バランスの規定はありませんでした。2000年基準では、住宅の平面図を4分割したうえで、バランスよく耐力壁を配置する規定が定められました。
接合金物の規定
柱や梁、壁などの構造上重要なつなぎ目に使用する接続金物について、サイズや使用する金物が指定されました。金物でつなぎ目を強固に固定することで、激しい揺れによる柱や梁の接続部の抜けを防ぎ、住宅を倒壊から守ります。
屋根の軽量化をおこなう方法
屋根の軽量化をおこなう方法は、葺き替えによる屋根材の全交換です。屋根のリフォームには古い屋根材を全て撤去し、新しい屋根材に入れ替える「葺き替え」と、古い屋根材の上から新しい屋根材を被せるように施工する「カバー工法」の二つがあります。
カバー工法ではどんなに軽い屋根材を選んだとしても屋根の重量が増えてしまうため、屋根の軽量化を目的にした場合は「葺き替え」による屋根リフォームをすることになります。
葺き替えは既存の屋根材よりも重くならなければ、新しい屋根材を自由に選べるメリットもあります。屋根材は軽量で耐久性の高いガルバリウム鋼板などの金属屋根材がおすすめです。
屋根の軽量化をおこなうタイミング
屋根の軽量化をおこなうタイミングは既存の屋根材が激しく劣化し、寿命を迎えたタイミングでおこなうのが最も無駄のないタイミングです。ですが、既存の屋根材が粘土瓦などの場合は寿命が長いため、お住いの住宅の耐震性に不安を感じたタイミングで屋根のリフォームを依頼するのも良いでしょう。その場合、外壁の塗り替えやメンテナンス時期が近いようであれば、一緒に依頼することで足場の設置費を節約できます。
まとめ
この記事では、屋根の軽量化をおこなうメリットや耐震基準の違い、屋根の軽量化の方法やタイミングについて解説しました。屋根の軽量化のメリットは多くありますが、もっとも大きなメリットは耐震性が向上することではないでしょうか。
代表的な屋根材の種類と重さの比較では、粘土瓦は金属屋根の10倍、スレートは金属屋根の4倍の重さがあることを解説しました。屋根材が軽量なほど耐震性は高くなりますが、どの耐震基準に則って建てられたのかも重要です。耐震基準は、旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の三つがあり、新しい基準で建てられた住宅ほど耐震性が高くなります。
葺き替えによる屋根リフォームのタイミングは、既存の屋根材の寿命もしくは外壁の塗り替えと一緒のタイミングが無駄なくお得です。
千葉県千葉市を中心に、屋根のエキスパートである株式会社ハジメは関東一円にも幅広く対応しております。職人直営で必要な仕事だけを真摯に取り組む姿勢は、どのような現場でも変わりません。
豊富な知識と経験を活かし、お客様の抱える屋根のトラブルをいち早く解決いたします。古くなってきた屋根に漠然とした不安を抱えている方も、株式会社ハジメにお気軽にご相談ください。お待ちしております。