「ジンカリウム鋼板」とは?特徴からメリット・デメリットを解説
2024/07/25
住宅の屋根材として、世界で多く採用されているジンカリウム鋼板をご存知でしょうか。日本ではあまりメジャーではないジンカリウム鋼板ですが、数ある多くの屋根材の中でもメリットの多い高性能な屋根材です。
この記事では、ジンカリウム鋼板の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。新築を検討中の方や屋根の修理・リフォームを検討中の方、ジンカリウム鋼板について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
ジンカリウム鋼板とは
ジンカリウム鋼板は、アルミニウム55%・亜鉛43.5%・シリコン1.5%のめっきを施した金属鋼板です。軽量で錆にくく、耐久性が高いといった特徴を持つジンカリウム鋼板ですが、
アルミニウム55%・亜鉛43.4%・シリコン1.6%と、ほとんど同じめっき組成を持つものに「ガルバリウム鋼板」があります。なぜ似たようなめっき鋼板が二つの名前に分かれているのかというと、商標登録した企業が異なっているからです。
商標名 | 登録企業 |
ZINCALUME® (ジンカリウム) | オーストラリアのBlueScope社 |
GALVALUME® (ガルバリウム) | アメリカのBIEC International社 |
そのため、ジンカリウム鋼板とガルバリウム鋼板は、ほぼ同じ性能を持つめっき鋼板と考えて問題ありません。
ここからが少しややこしくなるのですが、日本の住宅業界では、ジンカリウム鋼板やガルバリウム鋼板の表面を石粒でコーティングした金属鋼板を「ジンカリウム鋼板」と呼ぶケースが多く、表面に石粒がコーティングされていないアルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板を「ガルバリウム鋼板」と呼ぶケースがほとんどです。また、石粒がコーティングされた鋼板は「ジンカリウム鋼板」の他に、
- ストーンチップ鋼板
- 石粒付き鋼板
- 自然石粒付き鋼板
- 自然石粒付き化粧鋼板
などと呼ばれることもあります。欧米ではStone Coated Steel Roofingと呼ばれ、寒冷地域・熱帯地域問わず多くの国で採用されており、40年以上の実績があります。石粒付き金属鋼板であるジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板にはない特徴を多く持っています。ここからは、石粒付き金属鋼板としてのジンカリウム鋼板について解説していきます。
ジンカリウム鋼板のメリット
ジンカリウム鋼板のメリットは次の通りです。
- 耐久性が高い
- 遮音性が高い
- 遮熱性が高い
- 強風に強い
- 比較的軽量で耐震性が高い
- 塗装メンテナンスが不要
耐久性が高い
石粒で表面をコーティングしているジンカリウム鋼板は、錆や傷が付きにくく紫外線や風雨に強い特徴があり、耐久性が高いというメリットがあります。そのため、30年間の保証期間を設けているメーカーもあり、耐用年数は30年から長いもので50年ほどと言われています。
遮音性が高い
遮音性が高いこともジンカリウム鋼板のメリットの一つです。ガルバリウム鋼板などの金属屋根は薄い鋼板でできているため、雨粒が屋根に当たると金属屋根特有の微振動による高周波を出します。そのため雨音が響きやすい特徴がありますが、ジンカリウム鋼板は表面にある石粒の凹凸が屋根に降った雨粒を拡散し、自然石層によって吸収するため雨音が響きにくくなります。
遮熱性が高い
薄い鋼板でできた金属屋根は、熱伝導率が高いため日射によって屋根表面が温まりやすい
く、遮熱性が低い特徴があります。ジンカリウム鋼板は表面が石粒によってコーティングされているため、日射による熱が基材の金属鋼板まで届きにくくなります。そのため屋根の下地材や屋根裏に熱が伝わることを防ぐことができるため、遮熱効果が高くなります。屋根の遮熱性が高いと室内の温度を保ちやすくなるため、冷暖房費の節約にも繋がります。
強風に強い
ジンカリウム鋼板は屋根材を野地板に固定する際に、屋根材同士を繋ぎ合わせ屋根全面を一体化させるように野地板に固定する「インターロッキング工法」を採用されています。そのため台風や強風などでも一枚一枚の屋根材がめくれて飛ばされる心配が無いため、強風に強いというメリットがあります。
比較的軽量で耐震性が高い
地震による住宅の揺れは、一般的に屋根などの高い場所が重いほど大きく揺れるとされています。屋根材を軽いものにすると地震による揺れを少なくできるため、耐震性を高めることに繋がります。石粒付きジンカリウム鋼板は瓦やスレートに比べて軽量なため、屋根材に採用することで住宅全体にかかる重量を少なくでき、耐震性を向上させることができます。各屋根材の重量は以下の通りです。
屋根材の種類 | 1㎡当たりの重量 |
瓦・セメント瓦 | 約50kg/㎡ |
スレート | 約20kg/㎡ |
石粒付きジンカリウム鋼板 | 約7kg/㎡ |
ガルバリウム鋼板 | 約5kg/㎡ |
このようにジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板に次いで軽量な屋根材です。住宅の耐震性を高めたい場合は、屋根のリフォームのタイミングで軽量な屋根材に交換するのが効果的です。
塗装メンテナンスが不要
材質にもよりますが、多くの屋根材は施工から数年おきに塗装によるメンテナンスが必要です。ジンカリウム鋼板の表面は自然石なため、塗装によるメンテナンスが不要です。ジンカリウム鋼板は、メンテナンスコストを抑えたい方や数年おきの塗装メンテナンスが煩わしい方にもおすすめです。
ジンカリウム鋼板のデメリット
ジンカリウム鋼板のデメリットは次の通りです。
- 価格が割高
- 表面の石粒が落ちる事がある
- 断熱材一体式の屋根材に比べると断熱性に劣る
- 施工できる業者が限られる
価格が割高
ジンカリウム鋼板は屋根材の中でも割高な部類に入ります。石粒付きジンカリウム鋼板は国産のものが少なく、多くは輸入された海外の製品になるためコストが割高になりがちです。屋根の全面リフォームにジンカリウム鋼板を選ぶ際は、予算オーバーにならないよう慎重に検討しましょう。
表面の石粒が落ちる事がある
ジンカリウム鋼板は表面の石粒がパラパラと落ちる事があります。特に施工時や施工されて間もない時期に多く、落ちた石粒が雨樋に溜まることもあるため注意が必要です。石粒が多少落ちても性能に変わりはありません。
断熱材一体式の屋根材に比べると断熱性に劣る
ジンカリウム鋼板は表面の石粒によってある程度の断熱性を発揮します。ですが、断熱材が一体になった屋根材と比べると断熱性は劣ります。また、断熱材には外からの音を抑える効果もあるため、断熱性や遮音性を優先したい方は断熱材一体式の屋根材を検討しましょう。
施工できる業者が限られる
ジンカリウム鋼板は性能の高い屋根材ですが、国内ではまだまだメジャーな屋根材とは言えません。そのため取り扱っている業者が少ないといったデメリットがあります。どうしてもジンカリウム鋼板にこだわりたい場合は、施工できる取り扱い業者を根気よく探す必要があります。
ジンカリウム鋼板をおすすめする条件
ジンカリウム鋼板をおすすめする条件は次の通りです。
- メーカーによる長期保証が欲しい
- 沿岸部や強風が吹きやすい周辺環境
- 初期費用よりもメンテナンス費用を抑えたい
メーカーによる長期保証が欲しい
前述しましたが、ジンカリウム鋼板は30年のメーカー保証が付いているため、長期間に渡って製品の不具合を保証してくれる安心感があります。製品にもよりますが、海岸線より500m以遠であることなど、保証条件が決められているため事前に確認しておく必要があります。
沿岸部や強風が吹きやすい周辺環境
ジンカリウム鋼板は屋根への固定方法が強固なため、強風が吹きやすい地域におすすめです。また、沿岸部では強風に加え塩害の心配もありますが、ジンカリウム鋼板は表面の自然石層によってコーティングされているため塩害に強い特徴があります。そのため、強風が吹きやすく錆が発生しやすい沿岸部の環境に合った屋根材と言えます。
初期費用よりもメンテナンス費用を抑えたい
長期保証が付き、塗装メンテナンスが不要なジンカリウム鋼板は、メンテナンスにかかる手間や費用を抑えることができるため、施工後の煩わしさがありません。初期費用よりもメンテナンス費用を抑えたい場合に効果的な屋根材です。
まとめ
この記事では、ジンカリウム鋼板の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説しました。表面の自然石層によってコーティングされたジンカリウム鋼板は、錆にくく高耐久で比較的軽量といったメリットが多い屋根材です。初期費用が割高で施工できる業者が少ないといったデメリットもありますが、住宅の周辺環境や優先したい機能や性能を考慮して目的にあった屋根材を選びましょう。
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